やせ細る公共交通

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 日本のあちこちを移動する権利は平等と、久しく信じていた。しかし最近、自由にあちこち移動できる人たちと、移動が難しい人たちに二極化しつつあるのではないか。そんな思いを強くする経験をした。

 先日、青森県のむつ市に行った時のこと。列車のダイヤの関係で、約束の時間の1時間半ほど前に大湊の駅に着いた。駅から目指す海上自衛隊の大湊基地まで6キロほどもあるだろうか、タクシーで行こうとしたがタクシー乗り場に車が来ない。仕方がないのでバスで行こうとしたが、バスも1時間に1便ほどで時間が合わない。

 時間だけが過ぎて焦り始めたころ、タクシーが客を乗せて駅に来た。これ幸いと頼んだら先約があるという。それでも、運転手が会社に掛け合ってくれて何とか約束の時間に間に合うことができた。聞くと運転手不足で、需要に応じきれないとのことだった。
 用務を終えて、基地の人にタクシーの呼び出しを頼んだ。あちこち電話してくれたがどこもいっぱいと断られた。仕方がないので6キロ歩こうと歩き始めたらあいにくの雨。雨のなかをとぼとぼと駅を目指して歩いた。

 鉄道やバス、タクシーなど公共交通がやせ細ると、それに頼っていた人たちの移動がいかに不便になるか。一方でやせ細る公共交通に痛痒を感じない人たちも多い。しかし、何とか工夫して公共交通を維持しないと小さな町が、ますます住みにくくなってしまう。行きかう車の雨水を浴びながら、そんなことを考えた。

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